【開催報告】オンライン フリートークcafé「村のある暮らし」

去る9月9日に9名の参加者でオンラインのみで開催。予定の1時間で中締めをした後、引き続き8名で更に30分ほど「村のある暮らし」についてあれこれ話をしました。本企画の主催者であり、当日はファシリテーター役を務めた せき ゆみこからの報告です。

1)「村のある暮らし」この場での定義
一口に「村」といっても、世代や地域や文脈によってイメージがかなり違う場合があるため、共通認識に立ってスタートするところから始めました。この場でいう「村」とは「徒歩15分圏内くらいの生活空間で共同的に、相互扶助的に、創造的に暮らしあう、最小単位の土地に根差した新たにつくるコミュニティ」という意味で使うこととしました。

2)問題意識と3つの話題提供
「そもそも人は村をつくって暮らしてきた歴史がある」ことを再確認するところからスタート。
人が動物と違う点は、家族を超え社会を形成する能力をもっていること。そのため、家族内で自給自足して暮らす上で、足りないものは外との交流により豊かに暮らすことが可能になったのです。

ところが人類の「モノの豊かさへの追求」が加速したことで、お金に支配される割合が過度になりすぎ、結果的に人間性のバランスが崩れ、ひいては地球存続の危機に瀕する事態にまで陥いるという全地球的な問題に直面するところまで現代は追い込まれることに…。

このような社会構造を再構築する時期にさしかかっている”今”だからこそ、「現代版の村のある暮らしをどんなふうに創っていきたいか」を問いなおしてみよう、資本主義のオルタナティブを模索することが必要なのでは?という投げかけをしました。更に、このことについて、考える上で、ヒントになる3つのキーワードを提示しました。

①遊暮働学(ゆうぼどうがく)
暮らし自体が遊びであり、仕事であり、学びであるという暮らし方。
(株)パーマカルチャー研究所代表 三栗 祐己さんの造語です。下記リンクで無料メルマガの2通目で更に詳細が
 書かれています。
無料メルマガ講座のご案内 | パーマカルチャー研究所 (permaculture-lab.com)

②コモンズ
私有財、公共財(道路、公園等)に対して集落や会員組織など限定的共有財。例:日本の入会地(集落の共有林)。管理運営する村人(コミュニティーメンバー)を前提とする。
数年前に話題になりベストセラーにもなった、若き経済哲学者 斉藤幸平著 人新世の「資本論」を紹介。
人新世の「資本論」 (集英社新書) | 斎藤 幸平 |本 | 通販 | Amazon
人類がこれからの時代を生き抜いていく道筋として、資本主義のように、あらゆるものを商品化するのでもなくあらゆるものを国有化するのでもなく、第三の道として、水、電力、住居、医療、教育などを公共財として自分たちで民主主義的に管理し、これにより、「平等で持続可能な脱成長型経済」が実現すると説いてます。


③茶堂(ちゃどう)
日本の伝統的な小規模多機能なコミュニティ施設。集落の境の共有地に共同で建て、共同で維持管理するという習俗が建物とともに、現代もなお中国・四国地方の山間部に茶堂群としてわずかに残っています。
村のある暮らしのハブ、コミュニケーション装置として村の維持に重要な役割を果たすことを説明しました。
建物の形状は三方吹き抜けの木造のお堂で、鍵はなく中央の壁面にはお地蔵様などが祀られています。この日本の古くて優れた茶堂の現代版のあり方を、茶堂プロジェクトの10年の歩み振り返りながら伝えました。横浜市で開催された博覧会で実証実験した後、団地有志に引き継がれ移築された若葉台茶堂は、「鍵のない建物」を現代の都市部で維持できるのか当初は心配する方もおられましたが、10数年経過した今、団地内でしっかり根付いて親しまれています。木のぬくもりにほっこり!地元で愛されている旭区の「若葉台の茶堂」 – 相鉄線に乗ろう‼ (sotetsu-re.co.jp)

3)村のある暮らしフリートーク

①参加者(9名)プロフィール
年齢30~60代(内40代が半数)、男性3名女性6名、住所は北海道、関東、中部、関西、沖縄と全国各地から参加者が集まりました。定員10名に対し、当日欠席1名、参加希望者13名と関心の高いテーマでした。

②主な話題
一人ひとり「村のある暮らし」について、
  ・村のある暮らしに必要だと思うこと
  ・場所のイメージ
  ・村でどんなことをしたいか
も含めて思うことを話したのち、フリートークの時間を持ちました。以下、主な話題をシェアします。

・村づくりって、エコビレッジなど、継続しないケースがあると聞きます
 継続するための秘訣とかあるの? 他者との距離の取り方とかしくみづくりとか、まず村が継続していくための軸がぶれないベースづくり、そして何よりも人間的な成長など精神性を高めていくことも重要なのでは? リスクと思われることは、最初からそこに配慮した計画も大切かも。

・広範囲に分散している村人のつながりが人生を豊かにする?
参加者は8割は自給自足的田舎志向の人が多い中、東京の中心地や大都市の郊外的な場所をベースに「村のある暮らし」を考えている方もいて、フリートークの幅と奥行きが広がり、盛り上がりました。自給自足をめざすなら当然、広い土地で「田舎で村のあるくらし」と決めたくなるのだけれど、食べ物は生産する場所はあまりなくても、それ以外の部分では都会や郊外でも成立しうるのでは?という投げかけは、現代版の「村」は、自給自足的な共同体という概念を超え、「村」を固定化してとらえない方向に向かいました。
 東京在住の参加者の方によると、東京都心で新宿駅まで徒歩圏、公園も多いし、古い住人の間にはコミュニティがあって暮らしている部分もあり、ある意味村的な感覚を持てる心地よさにも気づいている。都会にいても、田舎とつながっていることが大事かも、二地域居住には関心があるので、田舎のコミュニティとつながりたい。東京は住んでいるというより、利用しているという感覚があるという話、違う視点からの村への関心がオモシロかったですね~

鍵のない暮らし、猫を外で飼う暮らしをしたい
前半の茶堂の紹介で、鍵がない建物という話は結構刺さったけど、それが可能なのは治安の良さ、信頼関係がベースにある村だからだと思う。
それと通じるかもしれない話として、猫を外で飼って、飼い主も猫も問題ないという環境があればうれしい。となるとやはり「猫をめぐる価値を共有する」村的な環境は必要になってくるかも。また安全確保については、警備会社に契約するのではなく、自治の力で環境をつくるということはベースとしてとても大事な部分。

・これからの村は、ライトな村、外からはわからない村がいい?!
「村」という言葉のイメージは人それぞれ。地域や時代によって多様。日本の村落共同体として語られる「村」について、マイナスな思い出として語る人に、仕事柄たくさんあってきたし、世界的なエコビレッジ運動、ヒッピー的コミューン、アーミッシュなどの系譜は昔からあって気になり続けて今に至っています。
オンラインで今日集まった参加者の皆さんが希望する「移住して村をつくって住み始めて継続していくこと」への具体的なアイデアや真摯で熱い思いがシェアされました。

村のつながりが濃すぎると、人間関係が窮屈になってきて失敗にもつながりやすいから、村をつくるなら「ゆるく」、「ひそかに」進めるのがいいかもという意見に、共感の声あり。村は共有財だから、丁寧に大切に育てたい。
最低限のルールも必要かもしれない。
また、村のつくり方、始め方を考える時、廃村まるごとを買ってゼロからつくるとか、ある共有価値でつながる人たちが、分散的に一定の範囲内に住み、いざとなったらかけつける仕組みがあればよくて、外からはわからないというのがいいなどなど。今回は場所を特定しない総論的な話の場でしたが、具体的なイメージにつながる話もいろいろ持ち寄られ、参加者の皆さんの意識の高さ、人としての成熟度を垣間見た気がしました。

・すでに村はオンライン上にできている
今日みたいに共通の話題で深く話せる者同士がつながっているオンライン上のこの場も、「既にここに村がある」という気がするという発言に、みんな大きくうなずく瞬間、オンラインの場が一つになった感覚がありました。
リアルな場ではなくても、これも現代版のある種の村、オンライン村といえるのでは?
大きくかまえすぎず、そんなところから、気楽に愉しく始まればいいのではないか?
何しろ、オンラインだからこそ、沖縄から北海道まで、日本列島のあちこちに住んでいる人が時間をともにできているのだから!これはオンラインあって実現できていることでオモシロイ!

③アンケート結果(村のある暮らしの実現性についての質問)

「村のある暮らし」を本気で考えている人7名(内3名は近い将来を希望、1名は既に村づくりに関わっている)。
実際となると実現は難しいと思う人1名、条件があえば考えらえるかもという方1名でした。関心をもつだけでなく、実際に具体的に実現可能性を真剣に考えている方が多い場でした。

4)まとめ

多様な参加者によるフリートークにより、従来の村社会ではない、新しい時代にあった形の
村のある暮らしを、みんな結構希望していることを確かめ合う場となりました。
今時の、みんなのニーズを表現した村が、各地に増えていって、住み続ける人もいれば、訪問しあう人もいて、地に足のついた暮らしをする様々な人が化学反応を起こしていくことで、人間の暮らしも豊かになり、自由で、持続的な方向性に進んでいけるにちがいないと希望が湧きました。
やはり、「村のある暮らし」は、これからの時代をつくっていく私たちにとって、とても大切なライフスタイルの軸をつくるものであることを実感しました。忙しい中、時間をあわせて参加して下さった皆様、本当にありがとうございました。

メルマガ講座を読みたい方はこちらのフォームからご登録ください。

人生後半からのローカルシフト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!